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地位保全等仮処分申立抗告事件(平成23年(ラ)第1885号),特別抗告申立(平成24年(ラ)第508号),許可抗告申立(平成24年(ラ許)第283号),及び特別抗告(平成24年(ク)第1014号)のご報告

解雇事件のご報告

地位保全等仮処分申立抗告事件(平成23年(ラ)第1885号)について,平成24年7月18日付けで,東京高等裁判所第22民事部の加藤新太郎裁判長,竹内純一裁判官,長谷川浩二裁判官は,抗告を棄却する決定を行いました。

平成23年(ラ)第1885号は,国民生活労働組合の執行委員長である眞壁とし子の,企業年金の給付減額を伴う規約変更について不同意の意見表明をしたことを最大の解雇理由とし,前記解雇を有効とした解雇事件(平成22年(ヨ)第3号)の抗告事件です。

特別抗告,許可抗告の申立

東京高等裁判所第22民事部の加藤新太郎裁判長,竹内純一裁判官,長谷川浩二裁判官の,地位保全等仮処分申立抗告事件(平成23年(ラ)第1885号)に対する決定には,

@ 憲法違反 (13条(幸福追求権),29条(財産権)等),

A 判例違反 (昭和49年(オ)第165号 従業員地位確認等請求事件 最高裁判所第二小法廷 昭和52年1月31日判決 高知放送事件),

B 法令違反 (確定給付企業年金法・確定拠出年金法・労働基準法の関係法令),

が含まれていると考え,平成24年7月23日に,特別抗告申立(平成24年(ラ)第508号),許可抗告申立(平成24年(ラ許)第283号)を行いました。

平成24年8月7日,早稲田大学名誉教授であり,法学博士である,佐藤昭夫氏の意見書を添えて,特別抗告理由書,許可抗告理由書を提出しました。

許可抗告の不許可

東京高等裁判所第22民事部の加藤新太郎裁判長,竹内純一裁判官,長谷川浩二裁判官は,理由書の提出から僅か8日後の,平成24年8月15日に,許可抗告申立(平成24年(ラ許)第283号)について,不許可の決定を行いました。

特別抗告の棄却

平成24年10月22日,最高裁判所第一小法廷の櫻井龍子裁判長裁判官,金築誠志裁判官,横田尤孝裁判官,白木勇裁判官,山浦善樹裁判官は,特別抗告(平成24年(ク)第1014号)を,「民事事件について特別抗告をすることが許されるのは,民訴法336条1項所定の場合に限られるところ,本件抗告理由は,違憲をいうが,その実質は原決定の単なる法令違反を主張するものであって,同項に規定する事由に該当しない。」ことを理由として,棄却しました。

許可抗告の不許可と特別抗告の棄却を受けて

この事件は,企業年金の給付減額に対して不同意の意見表明したことを,最大の解雇理由とする解雇事件ですので,過半数代表者(加入者)に対する保護法令に違反していることは間違いありません。

しかし,本当に大事なことは,司法が,「眞壁とし子唯一人のみの財産に対する,やむを得ない理由の無い,不当な侵害に対して(幸福追求権 憲法13条,財産権 憲法29条),彼女が,個人の自由な意見を表明したこと(自由権 憲法19条)自体を,彼女がキヤノン電子労働組合の事務員であることに照らすと権利の濫用・不当な行為であるとして(平等権 憲法14条),解雇理由として認め,彼女を不当に苦しめていること(生存権 第25条,勤労権 第27条)」なのです。

キヤノン電子労働組合は,眞壁とし子の同意を不要にするために,眞壁とし子を解雇しました(キヤノン電子労働組合は,眞壁とし子の同意が必要であることを認めたうえで,財産権の侵害に同意するはずが無いことを理由に,解雇に踏み切った旨,主張しています)。

眞壁とし子は,当該規約変更の同意不同意の意思決定が,彼女の唯一人のみの財産に関することであり,経済的にも,やむを得ない理由も無く彼女の質問に,キヤノン電子労働組合は回答をしておらず,説明も不足しており,かつ,キヤノン電子労働組合も「今後も説明を続ける」と約束していたので,「現在の状態では,不同意せざるを得ない」と意見表明しました。

それに対して,キヤノン電子労働組合は,法の下に平等であることを無視し,労働組合の事務員であることを理由として,「個人の自由な意見の表明は許さない,不同意することは許さない」と解雇したのです。

明らかに,基本的人権の侵害です。

しかし,さいたま地方裁判所秩父支部の飯塚宏裁判官の原審決定(平成22年(ヨ)第3号),東京高等裁判所第22民事部の加藤新太郎裁判長,竹内純一裁判官,長谷川浩二裁判官は,これら基本的人権の侵害を容認し,解雇を有効と認めました。

しかしながら,すぐにお分かりになるように,眞壁とし子の意見表明は,彼女自身の労働条件について意見表明です。彼女自身の労働条件について,「眞壁とし子は,何一つ,意見表明さえしてはいけない」なんて許されることなのでしょうか?

そもそも,これらの決定では,当該意見表明を,解雇理由とすることの当否についてさえ,まったく触れていないのです。

それゆえ,最高裁判所には,これら基本的人権の侵害,特に,「個人の自由な意見の表明」(幸福追求権の憲法13条,自由権の憲法19条,財産権の憲法29条)について,法の下の平等(平等権 憲法14条)であることを否定していることについて,公正な審理を求めたのです。しかし,審議すらされなかったことは,非常に残念です。

渡邉弁護士,大口弁護士がコメントしているとおり,この結果は,仮処分制度における,特別抗告,許可抗告の制度自体の,根本的な欠陥の結果であると考えます。

仮処分制度では,迅速な裁判のために,という名目で,「法令違反・判例違反を判断する」許可抗告制度と,「違憲を判断する」特別抗告制度を設ける,司法改革(改悪)を行いました。

許可抗告制度は「ある事件を棄却決定した裁判官が,当該決定に法令違反・判例違反が含まれていると判断した場合に,抗告が許可される制度」であり,特別抗告制度は「個人の権利を規定した法律の全ては,憲法が具体化されたものであるため,憲法違反があれば,同時に,法令違反があるにもかかわらず,憲法違反があっても,法令違反があるなら,抗告は棄却される制度」ですから,これらの制度が,いかに滑稽な制度であるか,ちょっと考えれば,すぐ分かることです。

しかし,法の下に平等であり,公共の福祉には一切反していない「個人の自由な意見の表明」,すなわち,民主主義の根底をなす,重要な行為そのものが,権利の濫用・不当な行為とされていることは,決して許してはならないと考えます。

最後まで闘い抜く所存でありますので,皆様の温かく心強いご支援を,今後も宜しくお願い致します。

キヤノン電子労働組合が,眞壁とし子の同意が必要であることを認めたうえで,財産権の侵害に同意するはずが無いことを理由に,解雇に踏み切った旨の主張

キヤノン電子労働組合「平成23年7月27日付第5準備書面(訂正版)」(34頁)

債権者に対しては、充分な資料や情報を提供しており、退職年金制度改定について合意もしくは不同意に対する判断を行うには充分な説明会並びに資料を提供してきた。その上で不同意の意思を債務者組合に対し通知してきたのである。債務者組合としては、親切丁寧な説明を行ってきたにも関わらず、債権者からの不同意の通知を受け、解雇とする判断を行ったものである。

キヤノン電子労働組合「平成23年12月1日付答弁書」(40頁以降)

また、抗告人は、平成22年10月14日付通知書(甲7)で、規約変更には不同意である旨明確に回答しており、相手方が、これ以上説得しても抗告人の同意を得られる見込みはないと判断したのは当然のことであり、本件解雇が平成22年10月29日になされたことについて非難されるべき点はない。

キヤノン電子労働組合「平成24年2月1日付準備書面(1)」(9頁以降)

抗告人は、「自己の労働条件の維持のために『不同意』としたのであって、そのうえで、『同意』できる可能性を模索・検討するために、相手方に対して説明を求めていたのである。」と主張する(12頁)。

この主張だけを見ると、抗告人は場合によっては同意する可能性があったにもかかわらず、不意打ち的に解雇したのは不当であるということを言いたいようである。

しかし、「自己の労働条件の維持のため」という言葉が端的に示しているように、抗告人には年金の給付条件が引き下げられるような制度改正には一切応じる意思はなかったのであり、相手方にとって、本件解雇はやむを得ないものであったことは明らかである。

キヤノン電子労働組合「平成24年2月1日付準備書面(1)」(23頁以降)

これらの主張だけを見ると、相手方がきちんと説明すれば、抗告人が同意する可能性があったように見える。

しかし、そのような可能性はなかった。

抗告人に対する最終の説明会は同年10月8日であり、相手方は、同年10月9日付回答書を抗告人に送付したが、抗告人は、同年10月14日付通知書で、説明義務が果たされていないことを理由に年金制度改定について不同意せざるを得ない旨回答している。

相手方としては、上記通知書や従前からの抗告人の対応から、たとえ相手方がいくら説明しても抗告人が同意する見込みは全くないと判断せざるを得なかったのであり、他にも解雇理由があったために、平成22年10月29日の解雇に踏み切ったのである。

代理人のコメント,特別抗告理由書,許可抗告理由書,佐藤名誉教授の意見書

をPDFファイルにて公開していますので,上記の文字列をクリックして,ぜひご覧ください。

なお,個人名については,伏せさせていただいています。

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