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和解が成立しました。皆様,ご支援ありがとうございます

平成30年6月11日,平成28年(ワ)第354号の地位確認請求事件に関して,原告眞壁とし子と被告キヤノン電子労働組合との間で,最終的に「『解雇』については,『使用者都合の退職』に変更された」ことを確認し,和解が成立しました。

本事件の解雇事件の仮処分申立,本訴及び別件訴訟の損害賠償請求事件を通じ,多くの皆様から,ご支援を賜りましたこと,心より御礼申し上げます。

損害賠償請求事件においては,皆様の,司法に対する厳しい目が,原告に勝利をもたらしてくださいました。

また,本事件の仮処分申立において,あれほど酷い決定を受けることになりましたが,皆様のご支援のお蔭で,心折れず,闘い続けることができました。

そして,本事件の本訴においては,仮処分申立の大敗があったにもかかわらず,皆様に傍聴席を毎回埋め尽くしていただき,強く公共性を示すことが出来ました。

そのお蔭で,公正な訴訟指揮を受けることができ,結果,納得のいく内容で,本和解を締結するに至ることができました。

皆様のご支援,誠にありがとうございます。

そして,早稲田大学名誉教授の故佐藤昭夫先生には,解雇事件の仮処分申立,別件訴訟の損害賠償請求事件の全ての書面に目を通していただき,「原告は間違っていない。司法が間違った判断をしている」「憲法にもあるとおり,誰かが不断の努力をしているからこそ,国民の自由・権利は何とか守られている。だから,例え敗訴したとしても,闘いは決して無駄にはならない」と仰っていただき,原告眞壁とし子は,不屈の力を戴きました。佐藤昭夫先生に,心より感謝致します。

裁判闘争の終結に当たっての声明文

声明文等に関しては,随時,更新していきます。

原告 眞壁とし子

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平成30年6月20日

平成28年(ワ)第354号 地位確認請求事件

原告 眞壁とし子

更新日 平成30年 7月 4日 決定日等の追加

    平成30年 7月 9日 「リスク分担型確定給付企業年金」を「リスク分担型企業年金」に変更等

和解締結にあたっての声明

第1 本事件について

平成22年10月29日,確定給付企業年金法に基づくキヤノン電子企業年金基金において,給付減額(確定拠出年金制度の導入も含む)に対して,原告眞壁とし子が,

  • @ 当該給付減額に,「経済的に,やむを得ない理由」が無いこと,
  • A 当該給付減額に関して,説明が不十分であったこと,
  • B 原告が不同意しても,原告の労働条件のみ,従来の制度を維持するだけで,他に影響を与えないこと,

等の理由から,不同意の意見表明をしたところ,被告キヤノン電子労働組合が,当該意見表明を最大の理由として,原告を解雇しました。

本事件は,当該解雇に対して,地位確認請求を行った事件です。

第2 和解について

平成30年6月11日,原告及び被告は,民事訴訟法第267条に基づき,裁判上の和解をしました。

本和解では,本和解内容に関しては,情報公開を一部制限されることにはなりましたが,本事件の解雇事件や別件訴訟の損害賠償請求事件について,情報公開に一切の制限を受けない内容となりましたので,後述のとおり,原告としては,必要条件を満たしたと考え,和解することに致しました。

第3 地位保全の仮処分申立事件の決定の異常さについて

原告は,本訴となる本事件に先立って,地位保全の仮処分命令を求める申立を行っています。具体的には,

  • @ 平成22年(ヨ)第3号 さいたま地方裁判所秩父支部 平成23年9月7日決定(飯塚宏裁判官),
  • A 平成23年(ラ)第1885号 東京高等裁判所 平成24年7月18日決定(加藤新太郎裁判長),
  • B 平成24年(ラ)第508号(平成24年(ク)第1014号)最高裁判所第一小法廷 平成24年10月22日決定(櫻井龍子裁判長),
  •   平成24年(ラ許)第283号 東京高等裁判所 平成24年8月15日決定(加藤新太郎裁判長),

の仮処分申立事件です。

しかし,これらの仮処分申立事件において,「当該意見表明は,原告が被告に雇われている身分である以上,権利濫用である。かつ,不当な行為である」と認定されてしまいました。

これらの判断は,国が保障する企業年金制度における,加入者の正当な権利に基づく正当な行為を理由とする解雇事件の初の判例となってしまったのです。極めて,異常な決定です。

原告は「加入者の正当な権利を蔑ろにする,これらの判例を,そのまま後世に残すことは,多大な悪影響を与えかねない」と考え,このことも理由の一つとして,本事件の提訴を行いました。

第4 リスク分担型企業年金の恐怖について

1 本件解雇の前より,「日本の東証第一部上場企業を中心に構成されている」ある団体は,政府に対して,企業年金の受給権者等(定年退職等の理由で,離職し,企業年金の加入者ではなくなった者)の給付減額に関して,加入者に対する同意確認のみで実現可能になるように要望を続けていました。

そのため,原告は,本件解雇のように,加入者の正当な権利を著しく蔑ろにする判例が存在することは,近い将来,深刻な問題になるのではないか,と危惧していました。

2 そして,ついに,平成29年1月より,「リスク分担型企業年金」という新たな仕組みが認められることになってしまったのです。

リスク分担型企業年金とは,一言で言ってしまえば,「給付増減調整により,運用リスクを事業主と加入者で分担する」制度です。詳細については,厚生労働省作成の資料「確定給付企業年金の改善(リスク対応掛金及びリスク分担型企業年金の詳細資料)」等を調べるとよいと思います。

しかし,リスク分担型企業年金の真の問題であり,真の目的は,一定の条件を満たせば,“受給権者等の同意確認を得なくても,当該受給権者等の給付設計をリスク分担型制度に変更できること”にあります。

前述の資料の33頁の「従来のDBとリスク分担型企業年金の移行時等の手続要件」に,

不利益変更になる可能性があることから、受給者についてのみ、以下の手続を課すこととする。

  • ・ 全受給者に対する事前の十分な説明
  • ・ 希望者には、年金給付に代えて移行前の給付を一時金で支給

と明記されています。

つまり,制度変更時,給付減額に該当しない場合,受給権者等に対して,@事前の十分な説明,A希望者には年金給付に代えて移行前の給付を一時金で支給,を行うだけで済むのです。

将来,どんなに給付減額される可能性があったとしても,制度変更時の判断だけで,受給権者等に対する同意確認が一切不要となってしまうのです。

3 これまで,確定給付企業年金法に基づく企業年金では,受給権者等に対する給付減額は,「経済的に,やむを得ない理由」がある場合のみ,認められていました(確定給付企業年金法施行規則第5条)。

しかし,リスク分担型企業年金の登場により,その状況は一変してしまいました。

現在のところ,リスク分担型企業年金への安易な移行を防ぐためには,

  • @ 法律を改正するか,
  • A 関係政省令等を元に戻すか,
  • B リスク分担型企業年金への移行に反対する加入者の正当な権利に基づく,正当な行為の保護を強化する,

以外に手が無いのです。

4 なお,リスク分担型企業年金への移行時の給付減額の判定は「制度変更時,減額調整が生じる可能性が無い場合,給付減額に該当しない」と判断しています。

減額調整の必要性の判断には,年金資産と積立必要額が密接に関係しています。

最近,急に,特別掛金が増えて,年金資産と積立必要額が同額に迫っている企業年金がありましたら,リスク分担型企業年金への移行を考えている,と用心したほうが良いかもしれません。

第5 和解締結の目的について

1 仮処分申立事件の判例が悪用されれば,「加入者の正当な権利に基づく,正当な行為」が「権利濫用,不当な行為である」と判断され,不利益取り扱いが容認されてしまいます。

しかし,仮に,本事件を原告勝訴で終えたとしても,仮処分申立事件の判例が消えるわけではありません。

当然のことながら,本事件も原告敗訴で終わった場合,更に深刻な影響が残ってしまいます。

そのうえ,リスク分担型企業年金が登場してしまったのですから,受給権者等にとっても,加入者の正当な権利の保護は,極めて重要な問題なのです。

2 原告は,様々なことを検討した結果,「『本事件及び仮処分申立事件の判例』の内容が,部分的に引用されて,悪用されていくことこそ,最も危険な状態である」という結論に至りました。

悪用を防ぐためには,本件解雇の内容及び結果を,出来得る限り,正確に伝えていくことこそ,重要であると考えました。

そのため,本事件の解雇事件について,情報公開に一切の制限を受けないことは,原告にとって,絶対に不可欠な条件だったのです。

本和解は,当該条件を満たしているため,「本件解雇の内容及び結果を,出来得る限り,正確に伝えていく」という目的を果たすことが可能であるため,和解することを選択したのです。

したがって,原告は,本和解について,勝利和解とは考えていませんが,上述の理由により,納得した和解である,と考えています。

第6 おわりに

1 本事件の経緯及び結果について,後項2のとおり,整理しました。

このように明らかにすることにより,結論ありきで,極めて悪質な,平成22年(ヨ)第3号,平成23年(ラ)第1885号,平成24年(ラ)第508号(平成24年(ク)第1014号)及び平成24年(ラ許)第283号を判例として,「加入者の正当な権利に基づく,正当な行為」を理由とする労働者への不利益取り扱いが容認されないことを切に願います。

2 確定給付企業年金法に基づく企業年金基金に関して,給付減額を含む規約変更の認可を受けるために,使用者は,当該基金の加入者である従業員に対して,当該給付減額に対する同意を求めました。

当該従業員は「当該給付減額に『経済的に,やむを得ない理由』が存在しないこと」「当該給付減額に関して,説明が不十分であったこと」「当該従業員が不同意しても,当該従業員の労働条件のみ,従来の制度を維持するだけで,他に影響を与えないこと」等を理由に不同意の意見表明をしました(後述の仮処分命令申立において,当該使用者も「当該給付減額に,確定給付企業年金法施行規則第5条第2及び3号規定の『経済的に,やむを得ない理由』が存在しない」ことを認めている)。

しかし,当該不同意及び当該不同意に関連した事由により,当該使用者は,当該従業員を,解雇しました。

当該従業員は,地位保全の仮処分命令申立(平成22年(ヨ)第3号,平成23年(ラ)第1885号,平成24年(ラ)第508号(平成24年(ク)第1014号)及び平成24年(ラ許)第283号)を行いましたが,「当該不同意の意見表明は,権利濫用である,不当な行為である」と認定されてしまいました。

しかし,当該不同意の意見表明について,

  • @ 確定給付企業年金法に基づく企業年金において,加入者に対する給付減額の理由として,「経済的に,やむを得ないこと」という理由を設けることは,法の趣旨に沿った加入者の受給権の保護であること(NTT年金規約変更不承認処分取消請求事件 平成18年(行ウ)第212号 東京地方裁判所 平成19年10月19日判決 労働判例第948号5頁/判例タイムズ第1277号76頁,最高裁にて確定),
  • A 賃金や退職金に関する労働条件の不利益変更に対する労働者の同意確認を行うにあたっては,労働者が使用者の指揮命令に服すべき立場に置かれており,情報を収集する能力にも限界があることを照らして,使用者は,労働者に対して,具体的な不利益の内容や程度について情報提供・説明を行い,労働者の自由な意思に基づいてされたものと認められるに足りるだけの,説明義務を果たさなければならないこと(山梨県民信用組合事件 平成25年(受)第2595号 最高裁判所第二小法廷 平成28年2月19日判決 民集第70巻2号123頁/判例タイムズ第1428号16頁),

からも明らかなとおり,当該従業員は,正当な権利の行使と考えています。

当該従業員は,当該仮処分命令申立の本訴(平成28年(ワ)第354号)を提訴したところ,当該使用者及び当該従業員は「確定給付企業年金法及び確定拠出年金法に基づく企業年金の給付減額に対して不同意としたこと及び当該不同意に関連した事由による『解雇』については,『使用者都合の退職』に変更された」ことを確認し,和解しました。

以 上

弁護士 大口昭彦

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眞壁とし子さんの裁判闘争の終結に当たって

弁護士  大 口 昭 彦

1 このほど、眞壁とし子さんがキャノン電子労働組合を相手取って提起し闘い続けてきていた、不当解雇に対する地位確認請求訴訟が、訴訟上の和解を以て終結しました。

和解内容の詳細については、眞壁さんから報告されているとおりですが、「解雇」から、最終的に「使用者都合の退職」に変更されており、眞壁さんの素志が貫徹されたものとなっています。

長年月の、眞壁さんの原則を決して曲げない闘い・闘志・粘り強い闘いに、心から敬意を表します。また常に、眞壁さんの闘いを包み、励まして下さった支援の皆様方に、弁護団の一人として深く感謝致します。

そして、昨年1月に亡くなられた佐藤昭夫先生に、この結果を報告申上げたいと思います。先生は、明快強靱な労働法理論を以て、一貫して闘いを支えて下さいました。

2 ニュースによりますと、労働契約法18条による有期労働契約の無期契約への転換の時期の到来を迎えて、不法不当な雇止めが横行しています。この事態は2014年の改正立法時に強く危惧されたところでしたが、危惧された事態が大規模に進行してしまっているのです。

しかも、例えば日通の場合、この雇止め条項の新設については、会社は「(企業内労組である)全日通労組と協定を結んだ結果」と豪語し、組合員である当事者が労組に駆け込むと、情報開示すら拒否したという状況です。

企業内労働組合が、会社の労務機関として機能する構造が、いよいよ強固なものとして形成されてきています。

3 眞壁さんの場合でも、会社からの経費援助まで受けていたキャノン電子労働組合は、長年、組合の活動を支えていた書記の皆さんに対して、会社からの働きかけに従い健康保険から排除しようとし、また人員整理も行いました。

このような不当労働行為を決して許さないとして眞壁さんの闘いは開始されました。

4 まさに、上記の日通の労働組合に露われたと同じ問題に対して、眞壁さんは単身起ち上がって、「間違っていることは、間違っていることである」という原則を明快に貫ぬかれたのであり、現在日本の労働者が直面させられている困難に立ち向かったのです。

佐藤先生はいちはやく的確に、眞壁闘争のこの普遍性を見抜かれ、明快に理論的援護をして下さり、全面的に応援して下さいました。

5 眞壁さんのこの闘争の意義が更に広く受け止められ、多くの戦線で闘っておられる皆様の励みとなることを期待しています。

そして私達弁護団も更に、眞壁さんと共に、そのような戦線に赴いて、現在のこの状況を改めさせてゆくべく努力したいと思います。

以 上

弁護士 渡邉祐樹

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眞壁とし子さんのキヤノン電子労働組合に対する裁判闘争を終えて

弁護士  渡 邉 祐 樹

1 眞壁とし子さんがキヤノン電子労働組合による不当解雇に対して2016年9月に起こした地位確認等請求訴訟が,2018年6月11日に,和解により終了しました。

和解は,「使用者都合で退職したこと」を確認する等の内容で,眞壁さんに対する不当解雇が撤回された勝訴的和解であると思っています。

2 思えば,2006年頃から,使用者のキヤノン電子労働組合と,同労働組合に対して眞壁さんたち専従書記を退職させることを進めさせたキヤノン電子株式会社とが,退職勧奨を受け入れなかった眞壁さんを退職させるために様々な嫌がらせをしてきたことに対して,2009年9月に損害賠償請求訴訟を起こしたのが裁判の始まりでした。

そして,その訴訟の係属中に,キヤノン電子労働組合は,眞壁さんを解雇してきたので,地位確認の仮処分命令の申立もしました。

しかし,仮処分命令は認められず,また,損害賠償請求訴訟も一審では全面敗訴してしまいました。眞壁さんには何も非がないにもかかわらず,裁判で勝てないことで,司法に対する不信とともに,むなしさを感じていました。

しかし,2015年4月に,損害賠償請求訴訟の控訴審において,使用者のキヤノン電子労働組合だけではなく,キヤノン電子株式会社に対しても共同不法行為を認める画期的な判決が出され,最高裁で確定しました。

そして,不当解雇についても,今回の勝訴的和解で終了しました。

このように,眞壁さんの裁判闘争は,眞壁さんの主張の多くが認められたことから,「勝利」で終わったといえます。

3 とても長い闘争でしたが,諦めずに闘い続けた眞壁さんに敬意を表するとともに,裁判期日のたびに傍聴席を満席にしていただいた多くの支援者の方々に,あらためてお礼を申し上げたいと思います。

以 上

損害賠償請求事件の一部勝訴の判決が確定しました!

最高裁が,双方の上告・上告受理申立てを棄却

平成28年6月21日,最高裁判所第三小法廷は,キヤノン電子株式会社及びキヤノン電子労働組合の共同の退職強要に対する損害賠償請求事件に関する,眞壁とし子,キヤノン電子株式会社の上告・上告受理申立て及びキヤノン電子労働組合の上告受理申立てのいずれも,棄却・不受理しました。

この結果,控訴審の一部勝訴の判決が確定しました。

したがって,控訴審の一部勝訴の判決,

  • @ 賃金請求権に基づく,一時金の未払い分の全額の支払い,
  • A キヤノン健康保険組合とキヤノン電子健康保険組合の合併の際に,キヤノン電子株式会社とキヤノン電子労働組合が,眞壁とし子に対して,共同で行った不法行為に対する損害賠償の支払い,

が確定しました。

特に,眞壁とし子の使用者ではない「キヤノン電子株式会社による不法行為」の存在も確定したことは,本当に画期的なことです。

このような結果が得られましたことは,ひとえに,多くの皆様のご支援の賜物と,心より感謝しています。本当にありがとうございます。

確定した判決内容

上述の@Aについては,次のように主文が変更されています。また,Aに関する「第3 当裁判所の判断」についても次のように変更されています

なお,控訴人は眞壁とし子,被控訴人はキヤノン電子株式会社とキヤノン電子労働組合です。一部,控訴人会社とありますが,キヤノン電子株式会社のことを指しています。

また,平成18年当時,A氏はキヤノン電子労働組合の執行委員長,I氏はキヤノン電子株式会社の取締役,M氏はキヤノン電子株式会社の人事副部長兼キヤノン電子健康保険組合常務理事です。

「主文」の変更

主          文

1 控訴人の本件控訴及び当審における追加請求に基づき,原判決を次のとおり変更する。

(1)被控訴人らは,控訴人に対し,連帯して,3万3000円及びうち3万円に対する平成21年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(2)被控訴人キヤノン電子労働組合は,控訴人に対し,310万4500円及びうち187万1100円に対する平成21年9月10日から,うち61万6700円に対する同年12月11日から,うち61万6700円に対する平成22年6月16日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

「第3 当裁判所の判断」の変更

(6)原判決35頁21行目の「説明したものであり,」〜22行目を「誤った説明をした上,関東信越厚生局に問合せをした控訴人に対し,今後そのようなことをしないようにとの命令を下していることが認められる。弁論の全趣旨によれば,当時,退職勧奨を受けた上に,政府管掌保険や国民健康保険に加入できるかどうかすらも曖昧な状態に置かれた控訴人が,将来に対する不安や焦燥を覚えていたことは明らかであるところ,控訴人に対する退職勧奨等をした当のA氏が,更に控訴人に対し,誤った説明をしたばかりか,命令をもって行政機関に対する問合せまでを禁じたことについては,社会的相当性を欠き,A氏が執行委員長を務める被控訴人組合の不法行為を構成するものというべきである。」と改める。

(9)原判決36頁8行目〜38頁3行目を以下のとおり改める。

「 しかし,当時,キヤノン電子健保以外のキヤノングループの健康保険組合には労働組合が雇用している者が被保険者となっている例がなかったというだけでは,被控訴人会社のI氏やM氏が被控訴人組合に対し,専従書記が新たな健康保険組合に加入することのないように働きかけることについて,合理的な根拠があるとはいえないし,そもそも上記のような例のないことを聞き及んでいたかのようにいうI氏の証言は,客観的な裏付けを欠き,直ちには採用できない。控訴人会社は,当審において,I氏の証言を補完するものとして,平成18年6月,7月の時点でキヤノン労働組合が直接雇用していた従業員が存在せず,キヤノン労働組合が従業員を直接雇用したのは同年8月1日である旨が記載されたキヤノン労働組合の回答書(丙26)を提出したが,上記回答書の記載は一定の時点での事実の有無に関するものであるのに対して,I氏の証言は時点を限定しない過去の事例の有無に関するものであるから,上記回答書の記載によってI氏の証言が補完されたものとみるのは困難というほかない。他に,I氏の考えや言動に関する被控訴人会社の主張事実を認めるに足りる証拠はない。さらに,I氏が,平成18年6月,7月の時点でキヤノン労働組合が直接雇用していた従業員が存在しないと聞き及んだことに基づいて,専従書記はキヤノングループの健康保険組合に加入すべきではないと考えたとすれば,その思考過程には看過し難い飛躍があるというべきである。

以上によれば,M氏及びA氏を介したI氏の控訴人に対する働きかけは,社会的相当性を欠き,I氏が取締役を務める被控訴人会社の不法行為を構成する(これまでに認定した事実によれば,被控訴人組合の不法行為と客観的な関連性を有し,共同不法行為となる。)ものというべきである。」

損害賠償請求事件控訴審の一部勝訴について,ニュースサイト「MyNewsJapan(マイニュースジャパン)」に記事が掲載されました

損害賠償請求事件の提訴時に記事にして頂いたキヤノン電子と労組が社員にイジメ 一時金大幅カット、隔離部屋に島流し | MyNewsJapanに引き続き,控訴審で一部勝訴したこともキヤノン電子と労組の共同不法行為を東京高裁が認定 職員解雇めぐり、一時金減額分310万円支払いの仮執行命令も:MyNewsJapanと記事にしていただきました。

ニュースには,本事件の詳細について,控訴審判決文も含めて,詳細に説明されています。ぜひご覧下さい。

更新情報

このホームページの主旨について

このホームページは,国民生活労働組合の執行委員長である,眞壁とし子の解雇無効を求めるためのホームページです。

具体的には,企業年金の給付減額に対して,不同意の意見表明したことを,最大の解雇理由とするキヤノン電子株式会社の企業内労働組合である,キヤノン電子労働組合の従業員であった眞壁とし子の解雇事件(平成23年(ラ)第1885号)について,公正な審理を求めています。

なお,企業年金とは,退職金の分割支払いです。退職金ですから,後払いの賃金です。

本事件の問題と影響について

本事件は,国が保障しているはずの,企業年金(確定給付企業年金及び確定拠出年金)の加入者の権利が問われており,国が保障する年金制度の,国民の信頼を根幹から失わせる可能性のある,重要な裁判です。

少なくとも1107万人の加入者の権利及び保護に悪影響を与えかねない,大変,社会的な影響も大きい裁判です。

このホームページのスタンスについて

公正な審理を求めるにあたり,このホームページでは,本事件の背景となる企業年金について言及した上で,さいたま地方裁判所秩父支部の飯塚宏裁判官の原審決定(平成22年(ヨ)第3号)の不当性を明らかにしていきます。

飯塚宏裁判官の原審決定(平成22年(ヨ)第3号)の不当性については,「本事件の概要」「佐藤名誉教授の意見書」「年金解雇の詳細」の3つの内容の順に,明らかにします。

情報公開について

本事件に関係する,準備書面,書証等は,公開の検討が済み次第,「各種資料」にて,随時,公開していく予定です。

不備な点については,予めご了承下さいますよう,宜しくお願い致します。

本事件を考える上での注意点について

眞壁とし子は,キヤノン電子労働組合に直接雇用された事務職の従業員であって,キヤノン電子労働組合の組合員ではありません。これは,キヤノン電子労働組合とキヤノン電子株式会社の労働協約の第6条(組合員の範囲)に規定されています。

当該規定自体は,キヤノン電子労働組合とキヤノン電子株式会社はユニオン・ショップ協定を結んでいますので,ごく自然なことです。

しかし,当該規定がある以上,眞壁とし子は,組合の運動方針に関して,口出しを一切できない立場です。

そうであるにもかかわらず,組合は「組合員が,同意し,決定した,運動方針による,従業員の不利益変更については,従業員が反対することは一切許されない」旨の主張をしています。

しかし,キヤノン電子労働組合が労働組合であったとしても,眞壁とし子にとっては「使用者」です。 したがって,労働条件の不利益変更に関しても,労働契約法(労働契約の原則)第3条第1項「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。」に従い,あくまで,キヤノン電子労働組合は「使用者」,眞壁とし子は「労働者」として,扱われなければなりません。

そして,実際にも,後述の損害賠償請求事件においては,組合が,眞壁とし子の一時金を一方的に減額したことは,不当な減額として確定しているのです。

当該判決自体が,労働契約法第3条第1項に従い,組合と眞壁とし子が,対等の立場として,労働契約を締結していることを明らかにしているのです。

もう一つの訴訟(損害賠償請求事件)について

本件解雇事件に先立つ,キヤノン電子株式会社及びキヤノン電子労働組合の共同の退職強要に対する損害賠償請求事件では,

  • @ 賃金請求権に基づく,一時金の未払い分の全額の支払い,
  • A キヤノン健康保険組合とキヤノン電子健康保険組合の合併の際に,キヤノン電子株式会社とキヤノン電子労働組合が,眞壁とし子に対して,共同で行った不法行為に対する損害賠償の支払い,

が確定しました。

詳細については,「現在までの経過」「損害賠償請求事件」や,損害賠償請求事件が掲載されたニュースサイト(MyNewsJapan「キヤノン電子と労組が社員にイジメ 一時金大幅カット、隔離部屋に島流し」キヤノン電子と労組の共同不法行為を東京高裁が認定 職員解雇めぐり、一時金減額分310万円支払いの仮執行命令も:MyNewsJapan)をご覧ください。

佐藤昭夫早稲田大学名誉教授(法学博士)の意見書について

本事件の概要については,「本事件の概要」にまとめていますが,企業年金に関する事件であるため,正直に言うと,概要といっても分かりにくいと思います。

しかし,飯塚宏裁判官の原審決定(平成22年(ヨ)第3号)の不当性については,早稲田大学名誉教授であり,法学博士である,佐藤昭夫氏が,端的に,的確に,しかも平易に,「意見書」としてまとめられています。

原審決定の本質的な問題については,ぜひ,「佐藤名誉教授の意見書」をお読みください。

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